鐘捲成貴の削った箇所:パターン②

☆パターン②
 パターン①の校長と拷問吏を、校長ひとりでやらせたら良い感じに字数が削れるんじゃね!?と思って試したもの。
 今回のエキシビジョンのために加筆修正してます。

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 天凌学園の中央に聳える長大な一本の古塔。
 いつからそこにあるのかは定かでない。ある者は数百年前から存在すると言うし、そうで無いと主張する生徒も一定数いる。

 ただそれでも確かなことがひとつある。
 それは、毎朝登校時刻になると、決まって塔の頂上から押耳話太留(おしみ わたる)校長先生が半裸で大鐘楼を打ち鳴らすことだ。

「オラオラ!!まだまだこんなもんじゃねえぞオラ!大鐘楼を打ち鳴らすぞオラ〜!!」

 押耳校長先生は当年56歳。中年を過ぎようとして久しい年齢だが、健康的な汗と躍動する筋肉に老いは感じられない。その肉体美も顕に、荒々しく素手で拳を突き立てる姿も、朝陽を反射して黄金色に輝く大鐘楼に照らされ、遠目にはむしろ優雅な雰囲気を演出していた。
 そして下半身はスーツ姿であり、まさにこれはカジュアルとフォーマルのマリアージュ。今でいうキレイめカジュアルとでも言えようか。この事実からも分かる通り、校長先生はお洒落だった。

「はぁ……っ!はぁ……っ!どうしたオラ!足んねぇぞ!そんな悪い肉体には鞭打ちの刑だ!!ぐあぁー」

 校長先生は拳を鐘に突き立てる一方、皮鞭で己の背中をしばき始めた。自分を叱咤激励しているのだ。ここまで生徒を想う姿に、鼓舞されない生徒はいるだろうか?毎日生きていれば、悲しいこともあるだろう。理不尽な現実に憤ることもあるだろう。それでも、大鐘楼に拳を突き立てながら自分に鞭打てる大人になって欲しくて、校長先生は毎朝こんなことをしているのだ。

 その時、上空から優雅なBGMとともに、一台のヘリコプターが空を飛んでやって来た。

「あっ!ヘリだ!空からヘリが優雅にやってきたぞ!!」

 上空を優雅するヘリコプターの存在に気づいた校長先生が、優雅に嬉しそうに空に向かって優雅に手を振る。生徒を愛する校長先生は、ヘリコプターに乗って登校する生徒が、あの有名な鐘捲成貴くんだと即座に見抜いたのである。まさに愛のなせる業だ。

「おーい!鐘捲の坊っちゃまー!聞こえますかー!私です!校長です!!優雅におはようございます!!」

 校長先生は大鐘楼に拳を突き立てながら優雅に挨拶をした。その元気なあいさつ声は、鐘の鳴り響く音と優雅なBGMに掻き消されて届かない。
 それでも校長は優雅に手を振る。

「ああ、坊っちゃま……阿保坊〜!!阿保のぼんぼん〜!!私は毎朝ここまでやってるんだ!!8000000兆円の件はもちろん融通を利かせてくれますよね〜!!」

 校長先生は個人的に鐘捲グループから融資を受けていたのだ。
 ヘリコプターは優雅にエンジェルデコイ(天使みたいな優雅なデコイのこと)を空一面に撒き散らしながら優雅に空を舞いつづける。
 だが、よく見ればこのエンジェルデコイには札束が混じっている。そしてさらによく見れば、札束一枚一枚が全て一万円札では無いか。鐘捲成貴という少年は、こうして毎朝ヘリコプターから金をばら撒いてるのだ。

「お父様にもよろしく言っておいてくださいよ〜!!坊っちゃま〜」

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「坊ちゃま。鐘が鳴っております。お急ぎになられた方がよろしいかと」

「うむ、今日は早く登校したいから早朝に鐘を鳴らしてもらうよう校長先生にお願いしたのだ」

「流石でございます」

 なぜ校長が半裸で鐘を鳴らすのか、阿保坊に聞いてもロクな答えが返って来ないことは分かっていたので、黒畠は敢えてその理由を尋ねなかった。

 

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