「ワタシは天才!当然何でも一番!
一番からの景色は気持ちがいいわね!」
(嘘である)
(一番の景色に特に興味はない)
(天龍寺あすかの心は乾いている)
■通り名
ミス・パーフェクト
■名前
天龍寺あすか
■性別
女
■年齢
15歳
■学年
天凌学園・演劇専修科・中学三年生
■外見
身長161㎝。体重52kg。
平均よりやや恵まれた体格。
艶やかな黒毛のツインテールに自信に満ちた瞳。
二ッと笑いを絶やさない口元。
一番を誇示するかのように人差し指をピンと立てる癖がある。
■性格
勉強、スポーツ、芸術、料理など様々な分野をあっという間に習熟して見せた天才。
その能力に見合った自信家であり、常に高みを目指している向上心のある人物。
自信家ではあるが努力家でもあり社交的。その才能で周囲の人間を引っ張っていく。
彼女の陰の努力を皆知っているため、振り回されながらも信頼し行動を共にしている。
「皆行くわよ!ワタシに付いてきなさい!」
────“そういう存在”を常に演じている。
本当の彼女は感情の動きがほとんどない。
高みを目指す喜びなどない。
勉強もスポーツも、面白くもつまらなくもない。
ただ出来るからやっているだけである。
どんな物事にも心動かず、よく言えば不動、悪く言えば乾ききっている。
能力のある人間と見られる方が生活しやすいらしい
社交的で好かれる人間である方が便利らしい
特に何事にも感傷を持たないが、こっちの方が“マシ”という理由で“そういう存在”で在り続けている。
偽りの自分を演じ続けることに苦痛はない。
そもそも本当の自分とやらに興味がない。
天龍寺あすかにとって人生は面白くもつまらなくもないが、“マシ”な道を淡々と選んでいる。
■能力
『俯瞰症(ふかんしょう)』
自身の状態を完全に把握することが出来る能力。
現在の脈拍、血圧といった内面的事象の把握だけでなく外面的事象の把握も可能。
具体的には第三の眼を持つことができる。
第三の眼は天龍寺あすかを中心に半径10m以内であればどこにでも存在できる。
第三の眼は天龍寺あすか以外に知覚出来ない。
天龍寺あすかは自らの眼で、
自身の正面、側面、背面、頭頂などを視認することが出来る。
視認の際に障害物は透過することが可能。
光がない状態でも自己の視認と把握が可能。
ゲームのTPS視点で自分自身をキャラとして見るような状態。
■プロフィール
天龍寺あすかは財界・政界に広く影響を持つ天龍寺家の次女である。
上に兄が一人、姉が一人いる。
多数の魔人能力者とパイプを作るために、そして
「天凌学園で教育を受けたのだから危険な魔人能力者ではありませんよ」
という体面のために中学から天凌学園に入学させられた。
そんな天龍寺あすかは紛れもない天才である。
環境だとか努力だとか、そういう要素を容易く覆す圧倒的な素質の持ち主。
合格率0.5%と言われる算盤の段位認定試験十段を、最年少記録を更新する4歳で合格。
これを皮切りに様々な分野の最年少記録を塗り替えていった。
周囲の人間はその才能に感嘆し、天龍寺あすかを称賛した。
「天龍寺家のお嬢さんなら褒めておいた方が今後得になるだろう」
そんな邪な気持ちを持っていた者たちですら、彼女の才に触れると打算抜きで心から褒めちぎった。
これはモノが違うと誰もが喝采した。
───しかしその称賛が彼女を潤すことは無かった。
大人たちの熱狂は、彼女にとっては例えるならば
「呼吸が出来るなんて凄い才能だ!」
「歩けるなんてお母さまの教育が良かったのね!」
とことあるごとに言われ続けるような感覚だった。
「お母さま。私は皆様が理解できません。出来て当然のことをいちいちお褒めくださります。」
「なぜあんなにも驚愕するのか。興奮し私を称賛するのか分かりません。」
「あのような方々と接点を持つことに意味はあるのですか?意義はあるのですか?」
「出来て当たり前のことを騒がれるのは、ほんの僅かではありますが居心地が悪く思います。」
「私は誰かと物理的な接触を持たずに、皆の求める作業をすればよいのではないでしょうか?引きこもっているのが正着ではないでしょうか?」
天龍寺あすかが母にこう相談したのは5歳の冬の朝だった。
このころには完全に彼女の心は乾ききっていた。
元々感情が死んでいたのか、
異様な才能による周囲との隔絶に後天的に感情が死んだのか、それはもう誰にも分からない。
彼女の相談に、母はゆっくりと微笑んだ。
母は頭が良くはなかったが賢い人であったので、娘の子供らしい視野狭窄を優しく諭した。
「あすか。貴方は人間でしょう?」
「?お母さま。私は当然人間ですが…」
「人間なら、社会と関わらずに生きていくのは難しいの。ならば、社会に好かれている方が“マシ”な生きかたよ。好かれるよう生きてみて、それでも他人とのかかわりが無意味と思うのなら引きこもりなさいな。今から引きこもったとして、何年か経って『やっぱり人と関わりたい』というのは難しいのだから、まずは選択肢を増やしておいた方が得じゃないかしら?」
母は、人と接することの素晴らしさだとか、愛とか、友情とか、そういった道徳的な知見で彼女を説得しなかった。
社会と関わらず生きるのは難しい
ならば社会に好かれた方が得である
選択肢は多い方がいい
酷くドライな論調ではあったが、実利に根差したアドバイスは酷く彼女に有効だった。
そして彼女は真に天才であるがゆえに、小学校に入るころには人に好かれる振る舞いというものを身につけていた。勇み足で社会との関わりを断とうとした幼い日の自分の浅慮を反省しながら、天龍寺あすかは社会に溶け込んでいる。
「さぁ!今日も一番目指して突き進むわよ!頑張ってやっていくわ!」
(嘘である)
(天龍寺あすかは頑張らなくても一番を取れる)
(そして一番にこだわってもいない)
(才能がある努力家を社会は好むと判断した結果のロールである)
天龍寺あすかは頻繁に『俯瞰症』で自身を見つめ、行動に違和感が無いかを確認している。
今日も天龍寺あすかは快活に友人と関わり、大いに笑い、大いに好かれている。
彼女はそんな自分自身を見ても欠片も心が動かないが、嫌われるよりはマシな生き方と判断している。