天凌祭開催式・定例演目
「満天の空と約束の鐘」
あらすじ
これは幾星霜も昔の物語――。
神々は音の祝福と共に森羅万象を織りなした。
世界には音楽が満ち、そして神々が
天へ帰ると共に静寂が訪れた。
神々の置き土産である祝福を忘れぬ者のみが
音を愛し、音楽を奏でたが
次代を経るにつれ忘れ去られていった。
そうして訪れた音の無い時代に
高らかに詩を歌う詩人が現れた。
詩人の歌に人々は耳を傾け心震わせた。
ただひとりを除いては。
その者は様々な理由から
心を失い、愛を失い、恋を失い、
ゆえに音を聞くことができなかった。
詩人は心を閉ざした者の境遇を悲しみ、
毎日新しい歌を届けた。
心を閉ざした者は戸惑いながらも
歌を受け取り、次第に二人は親しくなった。
そんな折、二人はある不思議な伝説を知る。
離れた丘の上にある、古びた鐘のことだ。
心から信じあう者同士が共に
鐘を撞くと奇跡が起こるというのだ。
とある晩、詩人は決心をする。
心を閉ざした者のためにその鐘を目指すのだ、と――。